ずいぶん前に流行った本「きみに読む物語」


きみに読む物語」を図書館に返しに行った。軽い読み物を探し,家事のコーナーで吉沢久子さんの本に気付いた。

以前借りた「家事で脳トレ65」という本の中で医学博士の著者がすごい人,と言っていた人。90代になっても,脳が成長していると,脳の写真付きで説明があった。

90代でも脳の思考系の分野が成長するって,素晴らしい。明るい気持ちになる。家事を工夫して,それを発表していた人。家事評論家?うろ覚え。マンネリはだめ。常に考え工夫して実行。それが良いらしい。

その本人が書いた本。「ひとり暮らしのおいしい食卓」80歳の時に書いた本みたい。

きみに読む物語」はアルツハイマーになった女性。病気は,努力したら避けられるというものではないから,仕方がない。

 

きみに読む物語

ずいぶん前に流行った本らしい。題名を聞いたことがあると思った。文章がきれい。

都会に住む有能な弁護士ロン。自然豊かな田舎に住むたくましい詩人ノア。その2人に愛されている絵の才能のある美しい女性アリー。アリーも2人を愛している。ノアからの手紙を,娘のためを思ってアリーに渡さなかったアリーの母親。登場人物は皆良い人。アリーがどちらを選んだか,途中には書かれていない。

愛し合う夫婦の美しい物語。相性と情熱。これが夫婦を強く結びつけている。年を取っても。

同じ施設で暮らすようにしたので,2人はいつも一緒にいて,同じ景色を見る。美しい自然を眺める。夫は2人の物語をアリーに読んであげる。でもアリーは夫のことも,もう分からない。病気は進行していくのだけれど,時々良くなることがある。進行の仕方も通常とは違っている。医師たちは,あり得ない,不思議だ,と言う。でも2人を見ている看護士さんたちは「愛の力ね」と。

医学では説明がつかないことがある。アウシュビッツ強制収容所で生き延びた「夜と霧」の作者,精神科医フランクルも,人はこれくらい食べなければ死ぬ,これくらい眠れなければ死ぬ,と学んだが違った。生きている,と。

熟練した寿司職人が,厨房に入ると手の温度が急にスッと下がる。医学的にはあり得ないと言われていることだけど,事実,手の温度が下がる。

きみに読む物語」に戻る。夫が脳梗塞で入院。半身不自由になってしまう。何日かしてやっと自分の部屋に戻れた。何日もアリーに会っていない。夜。夜はアリーは幻覚を怖がることが常だが,夫はアリーの部屋へ,足を引きずりながら苦労してたどり着く。眠っているアリーを起こせば怖がるに決まっていて,大騒ぎになるかもしれない。でも,キスをする。そうしたら‥。

 

彼らには子供が4人いて,皆幸せに暮らしている。親としても成功している。でも夫婦の絆が1番強い。

2人共年をとっている。夫は背が曲がり,リュウマチで指も曲がっている。妻はアルツハイマー。2人の見た目は美しくは見えないかもしれない。でも2人の歴史,思いを知る人たちには美しい夫婦。

 

相手を思う情熱を,ずっと持っていられれば良い。表面に表れなくても,心の中でずっと。