どんどん歩ける靴が欲しい

暖かくて風もない,素晴らしい青空の日。

白梅,紅梅がきれいに形を整えられた枝に咲いている。丸い花びらのボケも赤,ピンク,白の花を付けている。ミモザは明るい黄色の花をたっぷり咲かせている。

気持ちが良いのでどんどん歩いているうちに,うっすら白かった半月が,はっきり見えてきた。

明るい惑星2つ,縦に並んでいる。昨日,私が火星と木星かな,と言ったら,夫は,いや,木星と金星だと言ったのだったかな。夫が正しければあれは木星と金星。太陽にあんなに明るく照らされて。

太陽ってすごく大きくて熱い。でも恒星の中では中くらい。

太陽に一番近い恒星はプロキシマ・ケンタウリ。ものすごく遠い所にあるらしい。お隣と言ってもものすごく遠い。

月がはっきり見えてきて,星,惑星が明るく見えるということは,太陽が沈む。もう沈みかけている。

幼い頃,おばあちゃんの家に行った時,家の前の道に立って山が見える方に太陽が沈んでいくのを見ていた。大人になったら太陽が沈んでいく場所まで行って,太陽の家を見たい!と思っていた。幼い頃の夢の1つ。

山の向こうの,山に囲まれたきれいな泉が太陽の家だ。そばの小屋に太陽の世話をするおばさんが住んでいる。

透き通った水の中の赤い太陽を見たい。寝ていたら起こさないようにそっと近づいてのぞこう。

今日見に行こう。早く行かないと沈んでしまう。急いでどんどん歩いて行ってもきっと間に合わない。走っても間に合わない。それでも走って見に行ってみようか。

とにかく早足でどんどん歩く。

お昼過ぎから歩いているのに,まだまだ歩けそう。歩きたい。少しも足が痛くならない。

‥‥

そんな靴が私は欲しい。

(この話はフィクションです。靴が欲しいのは事実です)