子どもへの手紙
息子に手紙を書いた。1年半ぶりくらい。LINEで返事が来た。
娘が東北で一人暮らししていた時,2、3回手紙を書いたが,返事はメールで。
届いたよ,ありがとう,と返事が来るだけでも良しとする。
亡父は筆まめで,私が大学に行っている間,週に2通手紙を書いてくれた。楽しみだった。結婚してからも,週に1度くらい手紙や絵はがきを送ってくれた。
それに返事はほとんど書かなかった。帰省した時に謝ったら,返事は良いんだ,と言っていた。
親になって,子どもが家を出て行って,父に倣って手紙を書こうと思っても,書くことがそれほど無い。
父は,書くことがいっぱいあった。考えていることがいっぱいあったのだ。私への思いがいっぱいあったのだ。
大学時代に手紙をもらったのは,私だけかと思っていたら,弟ももらっていたと言う。
あら,なんだ,と初め思ったが,すぐ,父の愛情は大きい,と温かい気持ちになった。
私は父からの手紙全部とってあるが,弟は,どこかへ行ってしまった,捨てたかも知れない,と言う。
え!何で??弟は,読んだらもう用が済んだことになる,と答えたような。
もったいない,と思った。
父が亡くなって3年経った頃,もう懐かしく読めるか,と思って2通読んでみた。読んだ時は良かったが,その後辛くなって心が湿ってしまった。まだ読み返すには早過ぎた。
それ以来読んでいない。箱に入っているだけ。
読んで悲しくなるなら読みたくない。読まない方が良い。それならもう捨てて良いのかもしれない。
見て,負の気持ちにさせるものは,身のまわりに置かないようにしている。
父の手紙を入れた箱はクローゼットの中にあり,その箱を見ても辛くはない。
いつかまた読んでみて,それでも悲しく辛くなるなら,もう捨てようか。
古びて,‥もう既にすごく古い!‥虫がついても困るし。
手紙の内容を全部覚えているはずもないが,父の私への思い,愛情,願いはしっかり分かっている。
物なんか無くても,思いはしっかり心に根付いている。